zinma Ⅱ
「…なるほど。それで観光か何かで?」
とシギが聞くと、青年はははっと笑って答える。
「もちろん違いますよ。」
「それでは……ここへ来た目的は?」
そう聞くと青年は、一瞬口を閉ざす。表情は変わらないが、雰囲気が変わったのがわかる。
何か恐ろしい願いでもされたら、どうしようか、なんて考える。
すると、青年が口を開く。
「……あなたに…用がありまして。」
「それはどんな?」
すると、さっきまでとは違う、真剣な顔で青年はシギを見つめる。
彼の微笑みも美しいが、こういう顔も、ひどく、美しい。
人間には、見えない。
「私はあなたに会うために、この半年間、旅をしてきました。」
半年間……。
彼が続ける。
「ある人たちから、あなたに言付けを預かっているんです。」
「言付け?」
なぜ半年間もかけて旅を?
だれから言付けを?
なぜあなたが言付けを預かったのか?
たくさんの疑問が浮かぶが、それを口にする前に青年が続ける。
「まず、言付けを伝える前にあなたに言っておかなければならないんです。」
「……なんですか?」
すると青年は、姿勢を正すようにしてから、僕を見つめる。
不思議な色の瞳で、真っすぐに。
その瞳からシギは目を離せないでいると、青年はゆっくりと口を開いた。
「私は、あなたのご両親を知っています。」