zinma Ⅱ
「レイ。」
僕は名前を呼ばれて、はっと我に返る。
声の主のほうを見ると、ファギヌだった。
場所は、小屋の外。
さっきまでファギヌに体術の訓練をほどこされていて、休憩と言われて気に登って休んでいたところ、ぼーっとしてしまったようだ。
それに僕は、さっと木から飛び下りると、ファギヌの前に走る。
一度姿勢を正してから、答える。
「師匠。すみません。ぼーっとしてて。」
そして僕は、改めてファギヌを見る。金色のような茶色のような短めに切られた髪に、同じ色の瞳。いつもその目を細めて、優しく僕を見つめる。
僕は訓練の間は、カリアのことも、ファギヌのことも、師匠と呼ぶことにしていた。
そして師匠たちは僕のことを、レイと呼んでいた。
「気にしないで。じゃあ、続けようか。」
それに僕は一度、はい、と返事をしてから、身構える。
師匠が教えてくれる体術は様々だ。
ただの体術から始まり、剣術や槍術、弓矢も教わる。
師匠の身のこなしは、ほんとうにただ者じゃない。
すべての武道において、ほかに勝てるものはいないのではないか、と思う。
それはカリアも同じで、カリアは魔術を教えてくれるけど、体術もファギヌと並ぶほどだ。
明らかになんらかの訓練を施されている。
それも高度な。
師匠たちにどんな過去があるのか、まだ聞いたことはない。
ただ二人が、ルミナ族という、とうに途絶えたはずの、魔術師の一族の出身だということは、聞いていた。