zinma Ⅱ
そこまで見て、景色はまた真っ白な世界に戻った。
シギは自分でも、いま自分がどんな顔をしているかわからなかった。
ただただ、悲しい。切ない。
母さんが言う。
「『呪い』と契約し、なんとか生きながらえたあと、私はお前を産んだ。」
そこで母さんが微笑む。
「私たちはこの選択を、後悔などしていない。
村の者たちが言っていたように、私たちの一族はいつかは滅びる運命だったのだ。」
それから父さんが言う。
「お前を産んだのはいいけど、私たちには使命が残されていた。
『選ばれしヒト』を導く使命が。
それまでの道のりは厳しく、危険が伴うことを父さんたちは知っていたんだ。
だからどうしても…
お前を手放すしかなかった。」
父さんが悲しげにうつむく。
「ほんとに……すまない。」
母さんもその言葉に、切なげに目をふせる。
だが、シギはふたりにそんな顔をしてほしくなかった。
恨んでなんかいないから。
むしろ感謝している。
命をかけて、産んでくれて。
そこで母さんが、顔を上げる。真剣な顔で。
「お前の身体に異変が起きていたら、それは私たちの契約した『呪い』のせいだ。」
そこで顔をしかめる。
「私たちはお前を、『呪い』と契約したあとに産んだ。
私たちの血は、すでに『呪い』に侵されていた。」
父さんが継ぐ。
「私たちも気づかなかったんだけど、その『呪い』が、私たちの血からお前に受け継がれてしまったらしいんだよ。」
それにシギは驚いた。
じゃあ、この身体の異変は、父さんたちから受け継いだほんの少しの『呪い』が、血の中に息づいているからなのか……?
母さんが言う。
「おそらくお前は……
成長が止まってしまっていると思う。
私たちの契約した2つの『呪い』のひとつ、『すべてのものの時を止める呪い』が、発動してしまっているんだ。」