zinma Ⅱ
父さんが言う。
「お前は、私たちの血を通して『呪い』の影響を受けているだけだから、お前が傷ついたりすることはないよ。
だが、だからといってお前の身体に良いわけではないんだ。」
シギは自分の手を握りしめる。
この中を駆け巡る血の中に、恐ろしいものがうごめいているのだ。
父さんと母さんの命を救えるほどの、大きな力が。
母さんが言う。
「だから、お前にもその『呪い』を『選ばれしヒト』に返してほしい。
世界のためにも。
お前のためにも。」
それにシギは固まる。
お前に、も…………?
じゃあ、父さんたちはもう……?
でも。
でもそれなら父さんたちは……
シギの考えをよそに、母さんが続ける。
「私たちは、まず『選ばれしヒト』を探し出すという役目は終えた。
あとは、彼に力を与えること。
それを果たしたら、『姿を消す呪い』を解放し、私たちの『呪い』を『選ばれしヒト』に返すつもりだ。」
そして母さんは悲しく微笑む。
「というより、もうあと少しだと思う。
もう『選ばれしヒト』は、力をつけたようだから。
ただ………」
そこで母さんが涙を流す。一筋。
父さんがそんな母さんの肩を抱く。そして父さんが続ける。
「ただ、我が子に会えないことが悔いなんだけど……
でもこの記憶を残しておくことで、私たちは報われるから。」
父さんも悲しく笑う。
「もしお前が、私たちのいない人生を楽しく過ごしているのなら、この記憶を見せる必要はないだろうから、迷ったんだけど……
あの子には、この記憶は、我が子が幸せでない時にだけ、渡すように遺言を残してあるよ。」
あの子………?
それは『選ばれしヒト』なのか……?
それじゃああの青年は…………
「ここから先は、あの子に、レイに任せてあるから。」
そこで、また景色がはっきりしなくなっていった。