zinma Ⅱ
「では…………では。
父さんと母さんは、もうあなたに『呪い』を」
「返しました。」
シギの声を遮ってレイシアが答える。
真っすぐな、揺るぎない眼でシギを見つめて。
「私はあなたのご両親の命を、神に返しました。」
それに泣きそうになる。
叫びそうになる。
怒りそうになる。
レイシアを、殺したくなる。
だが、それはできない。
気高い父さんたちが、自分たちの役目に誇りを持って果たしたことなんだから。
シギは、身体の中から、今にも爆発しそうになるほどの怒りをなんとか抑え、質問を続ける。
「……あなたに、『呪い』を返したら、私はどうなる?」
「何も。あなたは代償を払っていませんから。ただ、年相応の見た目に、戻ります。」
もとの身体に戻れる……
それはたしかに、良いことだと思う。
「……両親は、あとのことはあなたに任せると言っていました。」
「はい。」
「この『呪い』のことだけですか?」
「いいえ。」
「他にも?」
「はい。ですが、それについてはあなたによく考えてもらう必要があります。
ですから、とりあえずご両親から受け継いだ『呪い』の解除だけ、先にやらせてもらいます。」
と言って、レイシアは立ち上がる。
とたん、空気が変わる。
張り詰めたような、ピリピリとするような感覚が、肌をとおして感じる。
レイシアが真剣な表情に変わる。
すると。
全身が青白く輝く。
明らかに、人以外の生き物になる。
瞳もきらきらと光って、薄い金の髪も、さらに白く輝き、ふわふわと宙を舞っている。
シギはその雰囲気に圧倒され、動けなくなる。
そのシギの頭に、レイシアが触れる。
とたん意識が持っていかれる感覚になる。
真っ白になっていく意識の向こう、レイシアが何か言うのがわかる。
「……最後にご両親にお会いになってください。」