zinma Ⅱ
「レイに……一生分の貸しができたな。」
と母さんがつぶやき、父さんもそれにうなずく。
シギがその状況についていけないでいると、母さんがこちらを向く。
シギとそっくりな、紺色の真っすぐな長い髪を揺らして。
父さんが笑いながら言う。
「ほんと、カリアにそっくりだね。」
そう言ってこちらに近づいてくる。
シギの目の前に立つ。
思っていたよりも、ずっと背が高い。
大きな温かい手をシギの頭に乗せ、そしてその手をシギの頬まで下ろす。
頬を温かく包んでから、ほんとうに嬉しそうに、言う。
「………目の色は、父さんといっしょだな。」
それにシギは涙をこぼす。
父さんを真っすぐに見つめたまま。
母さんもいつの間にか、こっちに来ていて、シギの頭をゆっくりなでる。
「ほとんどの要素は私だがな。」
と言って笑う。
父さんもそれに、ほんとだね、と言って声をあげて笑う。
こんなこと想像もしたことがなかったのに。
これ以上ないくらいに、うれしくて、幸せで、悲しい。
この幸せが続けばいいと願えば願うだけ、現実を見なければ、という声も強くなる。
それにシギは、
「父さんと母さんは、いつまでこうしていられる……?」
それに父さんと母さんが悲しそうな顔をする。
ほんとうはそんな顔させたくない。
でもこのままでは……
母さんが悲しげに微笑む。
「……お前は、私に似て優秀だな。」
父さんがそれに笑う。
「この判断能力はたしかにカリア譲りだね。」
それに母さんも笑ってから、答える。
「……レイに聞いただろうが、私たちはもうすでに一度命を失っている。」
それに顔を歪めそうになるが、こらえる。
母さんが続ける。
「いま私たちがこうしてお前に記憶だけではなく、意識を残してやれているのは、レイのおかげだ。」
あの人が…………