zinma Ⅱ



母さんが続ける。

「レイが、『選ばれしヒト』として、私たちの『呪い』を食べたとき、おそらくレイは…

その場で私たちから食べた『すべてのものの時を止める呪い』を使ったんだ。」



それを父さんが継ぐ。


「私たちからすべての『呪い』が吸われたとき、きっとレイは、自分に『呪い』をかけたんだろう。

レイの中に吸収された2つの『呪い』が、完璧にレイの血に混ざってしまう前にね。」


自分に『呪い』をかける?


それは……



そこでシギの気持ちを読んだように、母さんが言う。


「とても危険な行為だ。

ただでさえ『選ばれしヒト』は……」


と、そこで母さんは言葉を止め、顔を歪める。



その母さんの肩を抱き、父さんが言う。


「自分の中の『呪い』が血に混ざるのを止め、そうすることで、『呪い』に残っていた私たちの意識を保存したんだよ。」



「そんなことが………」

驚いてシギが言うと、父さんが、なぜか悲しい顔で言う。

「できるんだよ。

どうやらレイは、歴代の『選ばれしヒト』の中でも、飛び抜けて優秀なようだからね。

いろんな面で………」



そこでやっと母さんが口を開く。


「……そして今日お前に会って、おそらくレイは、お前が私たちの記憶を見て気を失っている間に、私たちの意識をこめた自分の血をお前に飲ませたんだろう。」



あの人……

いつの間に……



「そうすることで、お前の中に受け継がれたほんの少しの『呪い』の力と反応して、大きくなった私たちの意識を、自分にかけた『すべてのものの時を止める呪い』を解除することにより、蘇らせたんだ。」


「でも……

なぜそんな大掛かりなことをしてまで…」


そうシギが言うと、父さんがまた悲しい微笑みで答える。








< 56 / 104 >

この作品をシェア

pagetop