zinma Ⅱ



「それは………

レイが、優しいから。」



「優しい……?」


そう聞くと、母さんがうなずく。


「レイは優しすぎて、私たちが死に、お前がひとりになったことに責任を感じているんだ。」


そして悲しげに目をふせ、言う。


「……ほんとうは、もうレイには感情はないんだ。」



それにシギは、大きく目を見開く。


感情が………消えたのか?



だから、あんなからっぽの笑みを…?




母さんが言う。

「あまりにも強力な『選ばれしヒト』の力を受け入れたせいで、使命を果たす指令を出す声に、感情が侵食されてしまった。」


しかし母さんが優しく微笑む。

涙を一筋、流す。


「なのに………

不思議だな。あの子の優しさだけは、消えないんだから。」



そして母さんが、シギを優しく抱き寄せる。


父さんも、母さんの肩を抱く腕に力をいれ、シギをいっしょに抱く。



父さんが言う。

「おかげで…………

我が子に会うことができた。」




それに母さんが泣く。

父さんも泣く。

シギも泣く。



うれしいから。

悲しいから。




シギにももうわかった。


あの質問の答え。



父さんと母さんが、いつまでこうしていられるか。




父さんと母さんは、シギの血に残る『呪い』の中でのみ、意識を残していられる。




だから。






レイシアにこの『呪い』を返せば、父さんと母さんの意識もいっしょに、シギの中から消える。


今度こそ、2人の意識が、『選ばれしヒト』の血の中に混ざる。




そうすればもう、




会えない。








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