zinma Ⅱ
だがシギは、それを止めようとは思わなかった。
たしかに父さんと母さんとは離れたくないけれど。
2人は自分たちの使命をまっとうして死んだ。
それは2人の運命であり、誇りだと思う。
それを自分のわがままで汚したくなかった。
だからシギは、2人に抱き着く。
まだ幼い姿の自分の手は小さく、たよりないけど。
感覚を忘れないように。
すると2人も何も言わず、強く抱きしめてくれる。
しばらくそうしてから、シギは口を開いた。
「……一つだけ、わがまま言わせて。」
それにふたりはシギを見た。
しばらくして、シギは目を覚ました。
そこはまた薄暗い祠の中。
台座の前に、レイシアが座っている。
いまは人間の形をしている。
レイシアはまたからっぽの穏やかな微笑みを浮かべると、
「お話はできましたか?」
と言う。
それにシギはうなずいてから、言う。
「とりあえず…ありがとうございます。」
それにレイシアは驚いたように、ずっとにこにこと細められていた目を見開く。
いや、実際に驚いているのかは、わからないが。
「なぜですか?」
とレイシアが聞いてくるので、
「わざわざ、力を使ってくださったようなので。」
と答える。
それにレイシアは一度口を閉ざしてからまた微笑み、
「お気になさらず。」
と言う。
それにシギは、言う。
「……それで、もう今『呪い』をお渡ししたほうがいいんですか?」
するとレイシアは答える。
「もちろん早いほうがよいのですが、もうひとつ、あなたに決めていただきたいことがあります。」
「……もうひとつ?」
するとレイシアが真剣な顔になり、言う。
「あなたの中にある、ルミナ族が長年有してきた魔力も、私に返していただきたいんです。」