zinma Ⅱ
ある日、いつものように小屋にある文献を読んでいたとき、歴史の本の中に、ある気になる名前が出てきた。
ルミナ族。
神に選ばれた一族。
神の落とし子の子孫。
この世で唯一、魔術を使う一族。
太古からその大きな力により、この世を恐怖に陥れてきたが、300年ほど前に、ただの人間の一族との戦争に負け、その姿を消したと言われている。
その戦争に勝った一族は、その地に王都を創り、現代でも王都を中心として栄えるキニエラ族となった。
その後、ルミナ族は二度と姿を現さず、滅びたと言われてきたが、伝説では、古い森に囲まれたどこかにある禁断の地で、今もなおその子孫たちが魔術の修行を続けているとか…。
僕が6年前に王都の軍に捕らえられたのも、まだその伝説に怯える王家が、ルミナ族を必死で探しており、魔術らしいものを使った僕を、見つけてきたというわけだ。
結局僕の力は、魔術ではなかったけど。
だが、カリアとファギヌは、魔術を使うことができる。
まさかルミナ族なのか……?
そこで僕は意を決してカリアに聞いた。
ーーー師匠たちは、ルミナ族なんですか?
するとカリアは、一瞬動きを止め、しかしいつもの無表情で僕を見ると、
ーーーそうだ。
と答えた。
カリアはそれ以上何も話そうとはせず、ファギヌもそれ以上は話したがらなかった。
目の前から繰り出される、師匠の手刀をかわしながら、僕は思い出していた。
なぜルミナ族を出たのか。
ルミナ族はどうなっているのか。
体術はどこで習ったのか。
そして、僕が初めて師匠たちに会った日。
ーーー私たちは、先祖代々、『選ばれしヒト』を見守ってきた一族だ。
ルミナ族と、『選ばれしヒト』。
その間に、いったい何があるんだろう。