zinma Ⅱ
レイシアがゆっくりと近づいて来る。
一歩ずつ。
近づくほどに、レイシアの瞳の光が全身に広がっていく。
まずは髪に。
そして胴に。
腕に。
足に。
シギの目の前に来たときには、また、人とは掛け離れた、思わずひれ伏したくなるほど、美しい姿になっていた。
青白く輝くその腕を持ち上げる。
シギの額のすぐ前に、右腕が上がる。
「……いいんですね?」
レイシアが言う。
その声も、さっきまでとは違う響きが加わっている。
シギは目の前の大きな存在に、口をきけない。
返事の変わりに、まっすぐにレイシアの目を見つめる。
するとレイシアは、『選ばれしヒト』は、心を読んだように何も言わない。
そしてシギの額に、軽く手を当てる。
そして、
「ーーー。」
短く、何か言う。
しかしその言葉は聞いたことのない言葉で、シギには上手く聞き取れない。
だがその瞬間。
頭から何かが、ずるりと引きずり出されるような、不快な感覚になる。
ひどく、気持ち悪い。
その何かは全身に張り巡らされていたようで、頭から引きずり出されると同時、全身の血管からも、いっしょに何かが抜き取られるような感じがする。
同時に意識も持っていかれる。
シギは目を閉じ、その不快感に身を任せる。
この感覚といっしょに、父さんと母さんも消えてしまう。
だけど後悔はしない。
むしろ気分が良い。
これでやっと父さんと母さんが命をかけた使命を果たせる。
父さん。
母さん。
一筋の涙がこぼれるのを最後に、意識が消えた。