zinma Ⅱ
「あの、シギ様。」
その老人の声に、思考から引き戻される。
それにはっと顔を上げ、
「どうした?」
と聞くと、老人は遠慮しながら言う。
「あの……
いったいこれは……」
それにシギはやっと気がつく。
この反応は当たり前だろう。
歳をとらないという神童として扱われてきたシギが、突然年齢相応の姿になったのだ。
それにシギは、決める。
一度ためらうように目をふせてから、老人を見つめる。
「村の者たちを、呼んでくれるか。」
村の近くの森を歩く。
レイシアは、シギになら探せられると言っていた。
それを思いだし、シギは一度足を止め、集中する。
神童として村の者や客人の相手をしていたときのように。
すると、何か感じる。
何かと言っても、表現することはできないが、不思議な、妙な感じだ。
その感覚を頼りに森を進むと、ある場所で、足が止まる。
あと一歩進んだところ。
そこから、森の雰囲気が違う。
何か見えない壁のようなものが、そこを遮っているようだ。
そこに、手に意識を集中させ、触れる。
するとそこには、水のような、抵抗を感じる壁があるのがわかる。
そこにまず片手。
腕。
肩。
顔。
順番に、ずぶずぶと入っていく。
するとそこは、さっき見ていた場所とは違った。
さっきまではまだ森が続いているのが見えていたが、入ったとたん、その先が森ではなく、少し進んだところに、きらきらと光るものが見える。
湖だ。
シギはそこに向かって、歩いた。