zinma Ⅱ
もうすでに日が傾き始め、少しずつ太陽がオレンジ色になり始めた森。
その森にある広い湖が、太陽の光にきらきらと輝き、ちょうど湖の向こうの森の上に輝く、ほんのり赤くなった太陽が、まぶしい。
その幻想的な景色の中心で、その太陽でさえ脇役にまわって見えるほど、まぶしいものがいる。
湖に少し入ったところ。
太ももまで水につかり、ひとりの青年が立っていた。
少し濡れたプラチナ色の髪を湖のようにきらきらと輝かせ、集中するように静かに閉じたまぶたにある長いまつげが、頬に影を落としている。
見た者がみな、天からの遣いだと口をそろえそうなほど、その美しさは人間を超越していた。
レイシアだ。
シギが湖に近づくと、レイシアはゆっくりと目を開け、微笑んでこちらを見る。
そして静かに、話す。
「やっぱり、見つけられましたね。」
そう言って、湖から上がる。
湖の中をゆっくり歩きながら、自然な、無造作な動きで、空間に指を踊らせていく。
するとみるみるうちに空間に光る模様が浮かび上がる。
レイシアが陸に上がった瞬間、その模様が輝くのと同時、強風がレイシアの足元から吹き上がり、彼をつつむ。
一瞬で風がレイシアをまわり、水を吹き飛ばし、消える。
それは一瞬の動作。
一瞬の出来事。
レイシアはまるで呼吸でもするかのように、魔術を手なずけている。
それをじっと見つめていると、すっかり乾いたレイシアが、口を開く。
「……ほんとに、カリアにそっくりですね。」
と言って笑う。
シギが目を覚ましたとき、髪も身体と同じように時間を取り戻したので、彼の紺色の真っ直ぐな髪は、地面につくほど伸びていた。
いまはそれを腰よりやや上のあたりで切り揃え、首の後ろで紐で結んでいる。
その姿が、同じ紺色の髪を後頭部でまとめていた母さんに、レイシアには見えるのだろうか。