zinma Ⅱ
近づいてきたレイシアは、真っ直ぐにシギを見つめ、言う。
「…それで、ここに来たということは、決めたんですか?
ずいぶん、早かったようですけど。」
それにシギはうなずく。
それにレイシアは悲しそうに微笑んで、そうですか、と言う。
そして、
「どうするんですか?」
と聞く。
だがレイシアの中ではもう決まっているのだ。
それがレイシアの、『選ばれしヒト』の使命なのだから。
遅かれ早かれ、食べなければならない『呪い』なのだ。
だからレイシアは、返事を聞く前に、もう力を解放しようとする。
腕を軽くあげる。
それを見て、シギは答える。
「今は、魔力を渡すつもりはありません。」
それにシギは動きを止める。
眉をひそめ、シギを見る。
何か言おうとするが、それをシギは遮る。
「もちろんいつかは返します。
だから……」
「だから、あなたの旅に、着いて行きます。」
レイシアはそれに、ほんとうに驚いたようだ。
目を見開き、呆然としている。
そしてやっと口を開き、
「それは……本気ですか?」
と言うが、それにシギは当たり前のようにすぐにうなずく。
「はい。」
「ありえません。」
「それはなぜ?」
シギが聞くと、レイシアは呆れたように一度息を吐く。
そして心底困ったような顔をして、
「無理だからですよ。
無理。不可能です。
この旅は遊びじゃない。
あなたが思っているよりも、過酷です。」
と一気に言う。
だがそれにシギは返す。
「そのくらいわかってます。
それにあなたも、私の両親のもとを離れてからは、私を探す旅に出たんですよね?
これからの『選ばれしヒト』の旅がどんなものかは、あなたにもわからないじゃないですか。」
するとレイシアは呆れた顔でシギを見つめてから、目を逸らし、湖を見る。