zinma Ⅱ
シギは真っ直ぐに前を向いて言う。
「…この意志を曲げるつもりはありません。
たとえどれだけ考え直しても。」
それにまたレイシアは顔をしかめる。
だがシギは気にせず続ける。
「あなたに着いて行きます。
あなたの、『選ばれしヒト』の従者となります。
そのために、この力は必要なんです。
だから魔力を返すつもりは、ありません。」
きっぱりと、言い放つ。
それにレイシアの表情が読めなくなる。
考えるような目をして、湖を見つめる。
しばらくの沈黙。
突然レイシアの腕が、目にも止まらぬ早さで動く。
シギが気づいたときにはもう空間に魔法陣が出来上がり、輝いたところだった。
レイシアがこちらを振り向くのと同時、湖から頭ほどの大きさの塊の水が飛び出し、シギに向かってすごい早さで飛ぶ。
シギがやっと反応できたのは、すでにシギに水がぶつかったときだった。
すべてが一瞬の出来事で、頭が上手くついていかない。
すごい勢いでぶつかってきた水に驚き、思わず体制が崩れる。
前を向こうと目を開けようとするとすぐに、次の水が飛んできて、倒れる。
そこでやっと目が開くが、前を見るとすでにレイシアの回りに、4つもの魔法陣が浮かんでいる。
たった一瞬の間に。
そのうちのひとつが光ったかと思うと、倒れたシギの足を、地面に生えていた草が伸び、掴む。
外そうとするが、外れない。
そのうちにまたひとつの魔法陣が光る。
すると湖の回りの森から突然、すごい突風がこちらにやって来る。
その突風に巻き込まれて、たくさんの木の葉や、数本の枝もいっしょに飛んでくる。
また魔法陣が光る。次は2つ同時。
そこからまたそれぞれから突風が現れる。
その突風が森から来た風に巻き込まれた枝を巻き込み、通り抜ける。
2つの風にさらわれた2本の枝が、まだ倒れたままだったシギの袖をつらぬき、地面に縫い付ける。
すべての動きを合わせても、多くて10秒ほどだ。