zinma Ⅱ


あのとき…

父さんと母さんとの別れを、覚悟したとき。



ーーーーーーーーー


「……ひとつだけ、わがまま言わせて。」



そうシギが言うと、父さんと母さんはシギを見た。


だからシギは言う。



「……ルミナ族が集めてきた『選ばれしヒト』や『呪い』に関する知識を、ください。」



それに父さんと母さんが、目を見開く。

当然だろう。

これは最悪のわがままだから。


父さんと母さんは、この汚れた『選ばれしヒト』と『呪い』と、そして神の世界にシギを巻き込まないために、シギを捨てた。


それだというのに、今シギは、自分からその世界に飛び込もうとしているのだ。


この、神と、『呪い』と、悲しい悪魔がはびこる世界に。



だから父さんも母さんも、驚いたようにシギを見つめる。

父さんが言う。

「なぜ……」


それにシギは即答する。


「父さんと母さんは、ルミナ族としての使命を果たした。

私も、ルミナ族の最後の一人として、最後まで『選ばれしヒト』を見届けたいんです。」



それに母さんが、悲しげに眉をよせる。


母さんが言う。



「……わかっているのか?

こちら側の世界は、お前が考えているのよりも、ずっと質が悪い。

絶望であふれている。

魔術のような美しいものばかりではないんだ。」


それにシギはゆっくりうなずく。



正直、怖い。


だが、こんなにいろいろな世界の真実を知ってしまってから、何もなかったように生きていく自信がなかった。


それに。




いままでのようななんでもない人生を続けることが、何よりも嫌だった。




「…こんなことを言うのは、父さんも母さんもおかしいと思うかもしれないけど。

これは私の運命だと思っています。」




「運命?」


父さんが聞く。



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