zinma Ⅱ
それにシギはうなずいてから、
「なぜか、この自分の未来が、自分でも驚くほどしっくりくるんです。
いままでの人生にはなかった、未来が、いまははっきりと見える。
もしかしたらこの運命でさえ、神が操ったものかもしれない。
でもそれでも構わないと思えます。
この自分の意思までもが運命であったとしても、どこまでがそれなのかわからない運命より、自分の心を信じます。」
それにもう、父さんと母さんは、言い返すようなそぶりは見せなかった。
静かに、シギの決意を受け止めていた。
それから母さんは弱く笑ってから、
「頑固者なところも私にそっくりだな。」
と言う。
それに父さんも小さく微笑む。
父さんはシギの頭を優しくなでながら、言う。
「……こうやって、優しい人間たちを巻き込まなくて大丈夫なように、レイを強く育てたけど……。
これも『選ばれしヒト』の運命なのかな。」
それから父さんは自分の頭に軽く触り、離す。
するとその手の平に、拳大の光が宿っている。
父さんが言う。
「これが私の『選ばれしヒト』に関する記憶だよ。
ここはいまお前の意識の中だから、すぐに渡せる。」
父さんが手を離すと、光が真っ白の世界に溶け込んでいく。
すると膨大な量の情報が、頭の中に流れてくるのがわかる。
その情報の量が多すぎて、頭痛がする。
それに顔をしかめていると、カリアが言う。
「…この世界で生きていくなら、戦闘をレイに習え。
私たちの戦闘能力のすべてをレイに叩き込んである。
……いや、レイのほうが私たちよりも何倍も強いからな。」
それにシギは2人を見る。
引き締まった身体をした2人。
それよりも強いレイシア。
と、そこで。
世界が歪み始めた。
真っ白の世界が、ぼやけ始める。
時間が来たのだ。
別れの時が。