zinma Ⅱ
もしかしたら、レイシアに頼めば、また会えるかもしれない。
でもシギは、もう2人に会うつもりはなかった。
2人は大切だ。
これ以上ないほど。
だが、いつまでも、とうに死んでしまった人たちの影に頼っているわけにいかない。
前に、進まなければ。
頬を雫がつたうのがわかる。
だが、気にしない。
ここで泣きつけば、堪えられなくなる。
そのシギの決意を読み取ったのか、2人も、もうシギにそれ以上近づこうとはしなかった。
血という、離れられない絆。
死という、超えられない壁。
シギと、2人の間にある空間には、それが明らかに存在していた。
母さんが涙を流しながら、笑う。
父さんも、泣いている。
どんどん景色がぼやけていき、その2人の顔も、見えなくなっていく。
現実に戻される直前。
朦朧とする意識の中、母さんの声が聞こえた。
ーーー強く、生きろ。
シギはそれを思い出し、いまにも泣き崩れそうになるが、こらえる。
レイシアに着いて行くというこの自分の決断が、父さんと母さんと自分を繋ぐ。
だからシギはもう一度言う。
「いっしょに、行きます。」
するとレイシアは、ひどく悲しい笑顔を浮かべてから、答える。
「……『選ばれしヒト』の孤独について知っているなら、しょうがないですね。」
そう言って、湖の近くの木の下に置いてあった荷物の中から、一枚の布を取り出す。
そこには魔法陣が描かれている。
そしてレイシアはその布を手の平に置いて、もう片方の手で、何かの魔法陣を空間に描いていく。
その魔法陣が完成したところで、手の平の布がふわりと浮き上がり、魔法陣の中心で、停止する。