zinma Ⅱ
そこまでやって、レイシアが振り向く。
「これは、あなたのご両親から預かっていた、最後の記憶です。」
それにシギは目を見開く。
レイシアは続ける。
「この魔法陣には、ご両親の魔術に関する知識が納められています。
あなたは『選ばれしヒト』の知識をご両親から直接頂いたと思いますが、あれはあなたの意識の中だからできたこと。
現実の世界では記憶の受け渡しは、こうした面倒な魔法陣が必要なんです。」
そして魔法陣が光る。
すると魔法陣の中心にあった布に描かれた魔法陣が浮き上がり、シギのほうへ飛んでくる。
シギの頭に、入ってくる。
また膨大な量の情報が、頭に流れ込み、また頭痛がする。
立っていられなくなり、地面に膝をつく。
頭を抑えるが、どんどん頭痛はひどくなり、倒れる。
レイシアはそれを一瞥すると、またゆっくりと湖の中に入っていく。
真っ赤に染まる夕日を逆光におび、日の光にきらきらと輝く湖にゆっくりと進んでいくその姿は、天に戻っていく天使そのものだった。
世界の美しさすべてを集めたような彼は、また世界のひどい真実をその背に背負っている。
その背中を見送って、シギは意識を失った。