zinma Ⅱ



そこまでやって、レイシアが振り向く。



「これは、あなたのご両親から預かっていた、最後の記憶です。」


それにシギは目を見開く。



レイシアは続ける。


「この魔法陣には、ご両親の魔術に関する知識が納められています。

あなたは『選ばれしヒト』の知識をご両親から直接頂いたと思いますが、あれはあなたの意識の中だからできたこと。

現実の世界では記憶の受け渡しは、こうした面倒な魔法陣が必要なんです。」



そして魔法陣が光る。


すると魔法陣の中心にあった布に描かれた魔法陣が浮き上がり、シギのほうへ飛んでくる。


シギの頭に、入ってくる。



また膨大な量の情報が、頭に流れ込み、また頭痛がする。

立っていられなくなり、地面に膝をつく。

頭を抑えるが、どんどん頭痛はひどくなり、倒れる。



レイシアはそれを一瞥すると、またゆっくりと湖の中に入っていく。



真っ赤に染まる夕日を逆光におび、日の光にきらきらと輝く湖にゆっくりと進んでいくその姿は、天に戻っていく天使そのものだった。


世界の美しさすべてを集めたような彼は、また世界のひどい真実をその背に背負っている。




その背中を見送って、シギは意識を失った。









< 73 / 104 >

この作品をシェア

pagetop