zinma Ⅱ
理解の先へ
山篭もり神
もう何日になるだろうか。
2人の青年は、ある山の頂上近くにいた。
針葉樹に囲まれた、比較的寒い土地にある、少し高い山。
特に高いわけでもなく、珍しい生き物がいるわけでもない、用は、ほとんど人が近づかない、山。
そこにもう何日も、2人の青年はいた。
1人は紺色の真っすぐな長い髪を持った、背の高い青年。
もう1人は対照的に、プラチナの少し癖のあるやわらかそうな髪の、もう1人より少し小柄な青年。
シギと、レイシアだ。
シギのいた村を出たあと2人は数週間の旅を経て、この山にたどり着いていた。
この山は長らく人に踏まれていない地であるために、強い魔力に満ちていた。
だがらこそレイシアは、この地を選んだ。
シギの修業のために。
身体と身体がぶつかる鈍い音が、静かな山に響く。
この何日もの間、レイシアはシギに体術を教えていた。
シギは両親から受け継いだ『呪い』の混ざった血のために、11年もの間、5歳の姿のままだった。
だから、レイシアに着いて旅に出たころ、まだいまの身体、16歳の姿には慣れることはなく、自分の身体を十分に動かすことができないでいた。
だからまずは体術の訓練をしながら、身体に慣れることを目標とし、レイシアに訓練を受けていた。
「はっ!」
掛け声とともにシギが強く拳を突き出す。
しかしレイシアはその拳を顔を少し横にずらすだけで避けると、その突き出されたシギ手首を軽く触り、シギの勢いを利用して、投げ飛ばす。
シギは背中から地面にたたき付けられる。
苦しげに顔を歪めるがすぐに立ち上がり、また構える。
そこで、
「ここまで。」
そう言ってレイシアが両手を肩まで持ち上げ、ストップ、という仕草をする。
それにシギも、構えを解く。