zinma Ⅱ
「そろそろ魔術の訓練も始めていきますか。」
レイシアはそう言ってから、考え込むように顎に手を当て、うつむく。
それにシギは思わず、
「やらせてください。」
と言う。
シギはこの世で唯一、魔術という強大な力を使うことを許された一族、ルミナ族の生き残りであった。
もうこの世には、ルミナ族はシギしか残っていない。
魔術を受け継ぐのも。
しかしレイシアも、魔術を使うことができた。
その特殊な身体のおかげで。
レイシアは、神に選ばれた人間。
『選ばれしヒト』だ。
神の力の一部を与えられ、その力によってこの世の悪しき神の力『呪い』を食べることを、義務とされた。
ルミナ族の魔力もまた、神の力の一部であるために、その身体の中に神の力を有する『選ばれしヒト』も魔力を使うことができるのだ。
そしてルミナ族であったシギの両親から修業を施されたレイシアは、この世で唯一ルミナ族の魔術を受け継いだ者でもあるのだ。
だからシギはレイシアに教えを請う。
ルミナ族として、最後まで義務を果たしたいから。
ルミナ族として、『選ばれしヒト』を見届けたいから。
そのシギの意思をかねがね知っていたレイシアは、すぐに答えたシギを見て薄く微笑むと、
「…わかりました。明日から、魔術の訓練を始めましょう。」
そして続ける。
「あなたはご両親から魔術の知識は受け取っていますね。
あとはそれを、自分の身体に染み込ませるだけです。」
そう、シギは両親から魔術の知識を受け取っていた。
両親が記憶を魔術に封じ込め、それをレイシアに預け、その記憶をレイシアがシギに渡したのだ。
その記憶を、ほどく。
シギは決意を固めた。