zinma Ⅱ
そのシギを見てレイシアは少しおかしそうに笑うと、手元の魔法陣にあった水の塊を弾けさせ、魔法陣を解ながら、言う。
「まあ実践が一番でしょう。」
そう言ってレイシアはまた別の魔法陣を描きながら、言う。
「これから私は姿をくらまします。
以前あなたの村へ赴いたときに使っていた結界と同じ要領で、あなたの目には私が写らないように。」
そこで魔法陣が完成する。
「しかし以前のよりも、少し複雑な結界です。
ただ曖昧な魔力の気配だけで見つかるものではありません。
あなたが魔力との『共鳴』に成功したとき、魔力が私の居場所をあなたに教えてくれるでしょう。」
その話が終わるのと同時、魔法陣が輝いたかと思うと、レイシアの姿が消えた。
それにシギは驚くが、レイシアほどの魔術の使い手なら簡単だろう、と思い直す。
ルミナ族でもずば抜けた才能を持っていたシギの両親でさえも、レイシアはたった7年ほどの修業で追い抜いてしまったのだという。
それはレイシアの『選ばれしヒト』の力だけではないと、シギは思う。
もとから戦闘に関する才能が、ほかの人間を遥かに上回っているのだ。
でなければあの体術訓練の動きを、説明できない。
そこまで考えて、シギは空を見上げる。
シギはそのレイシアの従者になると決めた。
『選ばれしヒトの孤独』を防ぐために。
いままでの『選ばれしヒト』たちがことごとくたどってきた最悪の最期を迎えないために。
あのレイシアに着いて行く以上、自分も力をつけなければ。
そしてシギは空を見上げたまま、目を閉じる。
世界に、集中する。
というより、世界に満ちる魔力に集中する。
さあ、やろう。
『共鳴』を。