zinma Ⅱ
目を覚ますと、そこは森。
どうやらあのまま眠ってしまったらしい。
シギは身体を起こし、小さく伸びをする。
ずいぶん身体が軽くなった。
伸びをして、小さく息を吐くと、ははっと声をあげて笑う。
とても幸せな気分だから。
あの夢は。
あの夢の中の少年と少女は。
父さんと母さんだ。
おそらく今、『共鳴』の感覚を父さんたちの記憶から探っているために、影響されたのだろう。
前に見た姿と変わらない、子供の姿の父さんと母さん。
その母さんがあまりにも自分に似ていて、少し驚いた。
父さんも母さんも言っていたけど、シギの容姿はほとんどを母さんから受け継いでいる。
紺色のまっすぐな髪も。
切れ長の目も。
だが瞳の色だけはちがう。
金色の瞳。
これだけは父さんから受け継いだものだ。
そんな自分の中を流れる父さんと母さんの血を意識して、シギは幸せになった。
拳を、握る。
『強く、生きろ。』
そう言った母さんの言葉を思い出す。
最期の別れのとき、泣きながら、強く言ってくれた母さん。
この血にかけて、最期まで、強く生きる。
そう決意を持ちなおし、シギは立ち上がった。
もう一度、『共鳴』をしてみる。
だが次は、目を開いたまま。
父さんと同じ金色の瞳で、まっすぐに前を向いたまま。
ルミナ族の、父さんと母さんの、自分の血に、集中する。
世界に、意識を放った。
魔力はほんとうに世界にあふれていた。
さっきまでまぶたを閉じた真っ暗な世界に感じていたきらきらした魔力が、いまは自然を覆っている。
木にも。
草にも。
花にも。
土にも。
空にも。
世界に広がる魔力を、シギは今見ることができていた。
さらにそれだけではない。
その魔力が、自分の鼓動に合わせて、脈打っているかのように感じる。
世界すべてが自分の身体になったような感覚だ。