zinma Ⅱ
「いまのネタ晴らしも、あなたが魔力を磨ききったころに、やってあげましょう。」
そう言ってレイシアは笑うと、シギに近づく。
背の高いシギよりも、少しだけ小さなレイシアは、近くから見ると、まだ幼さの残る顔だというのがわかる。
にこにこと笑う顔は、やはり、輝いている。
「さて、あなたも『共鳴』に成功したわけですから、明日からは魔術の伝授をしていきますね。
というよりも、本当ならあなたはその知識をもう得ているわけですから、あとはいかに身体に馴染ませるか、ですが。」
そう言ってレイシアは振り返り、どうしましょうかねぇ、などとつぶやきながら、森の中へと歩いていく。
それから気づいたようにシギのほうを振り向き、言う。
「ああ、もう休んで大丈夫ですよ。
今日は身体よりも精神が疲れたでしょう。
明日に備えて、ゆっくりしたほうがいいと思いますよ。」
そう言い残すと、真っ暗な森へと、消えて行った。
そのレイシアの背中に一礼をし、シギはため息をつく。
本当に疲れてしまったようだ。
シギは湖の近くの適当な場所を選び、横になる。
一度レイシアの消えて行った森のほうを見つめる。
レイシアと度をするようになってから、寝る時間になって、レイシアがどこかへ行ってしまうというのはよくあることだった。
何をしているのか知らないが、わざわざ聞くこともないので、知らない。
また、レイシアはこういった湖にいることが多い。
源泉の近い湖は魔力が高く、瞑想をして魔力を高めるのに良いんですよ、と前に言っていたが、シギにはそれだけではない気がする。
何か思い入れでもあるのだろうか。
それに、レイシアが癖のようによく触っている、首にかけた石。
宝石にしてはまだ磨かれていないし、いつも淡く光っている不思議な石。
あれも何か意味があるのだろうか?
そんなことを考えているうちに、シギは深い眠りに落ちていった。