zinma Ⅱ
悪魔の授業
次の日からレイシアはシギに本格的な魔術の知識を施していった。
シギには両親から受け継いだ魔術の知識があるため、そこからゆっくりと必要な知識を引っ張り出していった。
さらにその魔術を使った実践をレイシアと行い、毎回両親の記憶から掘り起こすのではなく、シギの身体の記憶としてとっさに使うことができるようにした。
シギにとって、魔術はとても興味深いものであった。
それもただの魔術ではない。
レイシアに学ぶ魔術が、シギにとって感動に値するものだったのだ。
ただの風の魔術も、レイシアが使えば、それは自然に広がる見えない自分の手になる。
ただの水の魔術も、レイシアが使えば、それは大地をかける自らの分身である大蛇となる。
炎は自分の思念の塊に。
大地は自分の脈に。
雲は自分の視線と共に。
レイシアはルミナ族に伝わる魔術のさらに上をいくのだ。
ただの魔術ではなくなる。
自然を操るのではないのだ。
自然がレイシアの思うがままに、身体の一部のように、付き従う。
レイシアが呼吸をするように、自然がいとも簡単に形を変える。
レイシアは自分を悪魔だという。
人間ではないと。
シギには、確かにレイシアは人から掛け離れている、と感じる。
だが、良い意味で。
レイシアの魔術のセンスは異常なものなのだ。
とても人にできる技ではない。
だがそれは、レイシアが『選ばれしヒト』だからではない。
レイシアが本来持っている何かが、自然の魔力を引き付けるのだ。
それはいったい………
と、そこで。
シギの目の前に枝が飛んでくる。
シギはとっさに風の魔術を放つ魔法陣を描き、防ぐ。
シギは枝の飛んで来た方向へ、目を向ける。
やはりそこには…