zinma Ⅱ
「今のはあまり、良いとは言えない判断でした。」
にこにこと微笑みを浮かべたまま、レイシアがシギを見ている。
それにシギが口を開こうとしたところで、シギの後方の草原から、草のこすれる物音がする。
それにはっとシギが振り返るが、もう遅い。
草原から突然飛び出してきたまた別の木の枝が、シギに当たる。
湖のほとりに立っていたシギは、バランスを崩し、湖に落ちる。
『共鳴』に成功してから、レイシアとシギは、あの滝のある湖のほとりに寝床をかまえ、その周辺で修業を行っていた。
今は休憩だったために、シギは湖のほとりへやっきて、湖の水で顔を洗ったあと、ぼーっとしてしまっていたようなのだが。
湖から上がり、顔の水をシギが手の甲でぬぐう。
その様子を見ながら、レイシアは小さく声を上げて笑う。
その様子が、珍しく年相応の少年に見えて、いたずらに成功したように笑うレイシアに、シギも微笑む。
「ふふ、今のあなたは隙だらけでしたから、つい。
ですが、今のが誤った判断で、こういう結果になるのがしょうがなかった、というのも事実です。」
そのレイシアの言葉に、シギは長い髪を束ねていた紐を解き髪を絞りながら、レイシアを見る。
「あなたはもう条件反射として魔術を使えるようになったようですから、次は本格的な戦闘の訓練をしていきましょう。」
それにシギは、顔に張り付く前髪をかき上げながら、聞く。
「魔術を使った戦闘術ということですか?」
それにレイシアはうなずく。
そして軽く手を上げたかと思うと、目にも止まらぬ早さでいつの間にか魔法陣を書き終わり、発動させる。
湖のほとりの木の下に置いてある荷物に向かって人差し指を指し、手招きするようにひょいとこちら側に曲げる。
すると魔法陣から放たれた風が、レイシアの指の動きに合わせ、荷物からタオルを巻き上げ、こちらに来る。
そしてその風に巻き込まれたタオルは、ふわりとシギの頭にかかる。