zinma Ⅱ



レイシアが魔法陣を描いてから、タオルがシギにかかるまで、合わせて5秒ほど。


タオルを受け取りながら、シギはそれに感動する。



レイシアはシギがタオルを受け取ったのを確認してから、言う。


「とりあえず身体を乾かして、ここでゆっくりしてください。

十分休んで、瞑想して、魔力を貯めてください。

魔術を使う戦闘は疲れますよ。」



それにシギは、はいと返事を返し、その場に座る。

ほとりに腰を下ろし、足を湖につけ、タオルで頭をふく。


それにレイシアも近くに腰を下ろし、ブーツを脱ぐと、同じように湖に足を入れる。



首にかけた石を触りながら、レイシアは穏やかな顔で湖面を見つめている。



そこでシギは、突然魔法陣を描き始める。


レイシアは始め驚いたようにシギを見たが、魔法陣を見てシギが何をしようとしているのか理解し、微笑んで見守る。



シギは風の魔法陣を描いていた。

そして魔法陣を完成させると、さっきレイシアがやっていたように、自分たちの荷物のほうへ意識を集中し、風を放つ。


そしてタオルを抜き取るように風で巻き上げるが、失敗。


荷物全部が巻き上げられ、散らばる。



しかしそこで、いつの間にか魔法陣を完成させていたレイシアが、魔法陣を発動すると同時に右手の手の平を荷物のほうに向ける。


まるで制するかのように小さく手の平を下から上へと動かすと、シギのとは別に現れた風が、散らばろうとしていた荷物を地面へと戻す。



さらにレイシアはそのまま、ほかの魔法陣を描くことなく、手をひょいひょいと動かすだけで、その手の動きに合わせるようにして小さな風がいくつも動き回る。

その風にさらわれて、散らばっていた荷物がもとの場所へと戻っていく。




その一部始終を見つめ、シギは感嘆の声を上げる。

「……さすがですね。」



レイシアはそれにシギの方を向き、微笑む。

「そんなことないですよ。」







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