zinma Ⅱ



「これにもタネがありまして。」


そう言って、おどけるように肩をすくめレイシアは笑う。



「タネですか?」


そうシギは言うと、レイシアはそれには答えず、さっき風を放った荷物の方を見つめる。


するとさっき消えたと思っていた風が、レイシアのほうへと、かける。


そして風がレイシアにぶつかったかと思うと、風がレイシアに纏わり付き、レイシアの身体を浮かせる。



シギは驚いて、目を見開く。



初めて『共鳴』をしたときにも見た、浮遊の魔術。


あのときから疑問に思っていたのだ。


魔術はヒトに作用することはできないのだ。

『呪い』はヒトに作用する神の力。

魔術は自然に作用する神の力。


なのにレイシアはあのとき、浮遊に成功し、しかも『選ばれしヒト』の力ではないと言っていたが。


まさか、風の魔術だったとは。




そのころにはレイシアは地面から離れ、湖の真ん中のあたりに、立っていた。


「…風の魔術でそんなことができるんですか?」

わずかに振るえる声で、そうシギが聞く。


するとそれにレイシアは振り返り、小さく笑う。


「いいえ。これはただの風の魔術ではないんですよ。」

そう言ってから、こちらに手を指しのべ、言う。


「『共鳴』で、私を見てみてください。

いまのあなたなら、大丈夫。

以前のように、眩しくはないでしょう。」


その言葉にシギは一瞬ためらうが、従う。

集中し、世界に魔力を映し出す。





途端に目の前が眩しくなり、顔をしかめるが、なんとかこらえる。

確かに前ほどのまぶしさではなく、徐々に慣れ、レイシアのほうを見れるようになる。



少しずつ眩しい光の中から、レイシアの影が見えてくる。



するとそこには…







< 93 / 104 >

この作品をシェア

pagetop