zinma Ⅱ



女神だ。




美しい、女神。







この世のものとは思えない、美しい女神が、レイシアに寄り添っていた。



人間ではない。




まず、身体が魔力の輝きによって構成されている。

肌も、髪もすべてが若草色の魔力に染まっている。

瞳も、同じ色に塗り潰されていて。


若草色をした長い髪がふわふわと水に流れるように、空中になびいている。


魔力の輝きによって、靄のようなもので構成された身体。


その女神が、レイシアに擦り寄るようにして、浮かんでいた。




シギには、まだレイシアのことが眩しくてまともに見ることができないが。


そのレイシアに、聞く。


「それは………?」




するとレイシアの影が、言う。



「ご覧のように、魔力の結晶ですよ。

しいて言えば、妖精、ですかね。」


その間も、その妖精はレイシアのまわりを浮かんでいる。



「彼女のおかげで、私は浮遊の魔術を成功させることができます。

彼女は風の魔術の結晶です。

彼女を召喚すれば、ただの風の魔術にはできないことができます。」


そこで女神がシギを見つめる。



まばたきをしないで。

凝視する。





すると突然女神が鬼の形相に顔を変える。

何も聞こえないが、何か奇声を発するように口を開いている。


レイシアを守るようにしてレイシアの前に浮かび、シギを睨む。

猛獣が、警戒するように。



その迫力に、シギは動けなくなる。

射すくめられ、足が動かない。

冷たい汗が、首をつたう。




しかしそこで、


「大丈夫ですよ。」



レイシアが言う。




それに女神がレイシアのほうに振り向き、顔を伺うように見つめる。



その顔を見つめ、レイシアは微笑む。


「大丈夫。」



もう一度そう言い、女神の手をとるようにして、優しく手を差し出す。

その手に女神は自分の手を重ね、また穏やかな顔に戻る。

またレイシアに擦り寄るように、寄り掛かる。





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