zinma Ⅱ
そしてレイシアが妖精のほうを見て小さくうなずくと、妖精はレイシアの顔を優しくなでながら、弾けて消えた。
それを微笑んだまま見届けると、レイシアは次にシギを見て、
「もう『共鳴』を解いて大丈夫ですよ。」
と言う。
それにシギはうなずき、『共鳴』を解く。
もとの世界が戻り、やっとレイシアの顔を見ることができるようになる。
そのレイシアの瞳を見つめると、それを確認して、
「彼女が召喚されている間は、わざわざ魔法陣を描かなくても風を自由に操れるんですよ。」
とレイシアが言う。
それにシギが聞く。
「師匠は、いつあれを召喚できるようになったんです?」
するとレイシアは考えこむように空を見上げてから、言う。
「そうですね……。
たしか13のときには、今のような女神の姿ではありませんが、妖精を呼び出すことには慣れていましたよ。
そのときはまだ私の魔力が足りなくて、妖精は童謡に出てくるような、手乗りの大きさの少女の姿でしたが……。」
それにシギはまたレイシアを尊敬する。
13歳というと、レイシアが魔術の勉強を初めて、たった5年しか経っていないはずだった。
それなのに、そのころには……
その考えを一度断ち切り、シギはもうひとつ、気になっていることを聞く。
「風の妖精以外にも、妖精はいるんですか?」
それにレイシアは少し眉をひそめ、難しい顔をして、答える。
「はい。と言うのも、正しくはないのですが……。
妖精は魔力の結晶であるので、私が魔力を集めて初めて生まれます。
ですからいつも世界に存在するわけではなく、私が造っているようなものなんですよ。」
それにシギは驚く。
世界に妖精はいるわけではないのか。
いや、もしかしたら、昔はいたのかもしれない。
昔、まだ神の遺伝子が色濃く世界に残っていたころには、世界に満ちる魔力も強く、妖精のような魔力の結晶もいたのかもしれない。