zinma Ⅱ
そう言ってレイシアは手を軽く振り、合図を出す。
すると水の妖精は身体をひるがえして水しぶきとともに湖に飛び込み、水しぶきが弾けるのと同時、同じように魔力が弾けて消える。
炎の妖精もレイシアに一度礼をすると、レイシアの回りに浮いた炎を集め、炎に包まれ炎が消えると、妖精も消えていた。
あまりにも幻想的なその光景に、シギが目を奪われているとき、
「美しいでしょう?」
レイシアの言葉に、シギは現実に引き戻される。
そしてシギがうなずくと、レイシアは少し笑って、続ける。
「きっと、世界は美しいんですね。
私にはそれは………
わからないのですが……。」
そう言ってレイシアは微笑み、空を見上げる。
いつの間にか日が暮れ、夕日が空を真っ赤に染めている。
レイシアの言葉に思わずシギは顔をしかめ、うつむく。
『選ばれしヒト』の、悲しみ。
レイシアがいつから世界を美しく見ることができなくなったのか、シギにはわからない。
いまのレイシアの目に映る世界がどんなものか、わからない。
しかし。
そのレイシアの横顔が、ひどく切ないものであることは、確かだった。
そのレイシアの顔をそれ以上見つめていることができなくて、シギも空を見上げる。
太陽が、沈もうとしていた。