もうひとつの卒業
「じゃあ、ここで」
拓馬は、早苗のアパートの近くで、龍一に別れを求めた。

「ああ。またな」
龍一は拓馬の顔をみた。心ここにあらずという顔だった。
何処に行くんだろう?誰と会うんだろう?
色んな疑問が沸いてきた。でも、何も聞かなかった。

「拓馬。美鈴を抱いてやれよ」
つい、口をついて出てしまった。
龍一は、言って後悔したが遅かった。

「ああ。わかってる」
拓馬は一言そういって、龍一に背中を向けて歩き出した。
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