もうひとつの卒業
「今日はみんな、頑張ったわね」

部屋に入ると早苗は美鈴に言った。


「ええ。

みんなが、あそこまでやるとは思っていませんでした。

先生も大変でしたね。

解らないことばかりなのに」

部員全員が、早苗のことを認めつつあるなかで、美鈴だけは、早苗のことを認められずにいた。

それでいつも、刺のある言い方になってしまった。

「美鈴さん。

あなたのお陰よ。

何も解らない私を色々とサポートしてくれて、感謝しているわ。

一人では到底ここまで出来なかった。

よく、ここまで来れたなと思っているの。

これで、思い残す事は何もないわ」


「思い残すこと?

先生、辞めちゃうんですか?」

美鈴は、驚いて早苗の顔を真剣に見つめた。

そして早苗の強い眼差しを受け取った。
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