もうひとつの卒業
「この場所で終わりにしたいの。

半年間、ただ居るだけのつもりだったけれど、来て良かった。

本当は最後まで居たかったけれど、明日がどんな結果で終わろうと、消えてしまおうと思うの」


「明日勝ったら、明後日は決勝ですよ。

それまで居ないんですか?」


「居たら、辛くなるから。

段取りは全て済ませてあるわ。

後は、任せて良いかしら?」


「そんな。

先生。

辞めないで下さい。

私、先生のことを誤解していました。

やる気のない、ただ義務的に居るだけの人なのかと。

でも、実際は違った。

出来るだけの事をやってくれた。

そして、出来ないことまで無理して取り組んでくれた。

私知っています。

今回の試合のためにどれだけお金が必要だったか。

先生が自腹を切っている事も。

でも、素直になれなかった。

先生に対して、何故か素直になれなかった」
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