もうひとつの卒業
「早苗先生!」

生徒たちが押し寄せ、口々に叫んだ。

早苗を取り囲み、みなが抱き合った。


男たちの汗の匂い。

大きな手が早苗をもみくちゃにした。


早苗は息が苦しくなった。

目がかすみ、悪寒が全身を駆け巡った。

声を出そうとしたけれど、上手く行かなかった。

のどの奥で空気が漏れている気がした。

呼吸が出来ない。

意識が薄らいで来る。

身体に力が入らない。


風が吹いた気がしたけど、頬に感じたのは冷たい床の感触だった。
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