もうひとつの卒業
「ここはどこ?」

早苗はぼんやりした頭で目の前の美鈴に言った。


「医務室だよ。

早苗先生」

美鈴は不安な顔で、早苗をのぞき込んだ。


「私、どうしてここに?」

「会場で倒れたのよ。

きっと疲れがたまっていたのね。

心配したわ」


「みんなは?」

「ホテルにいるわ。

先生が帰って来るまで、夕飯はお預けだって言ってあるから、犬のように待って居いるんじゃない?」


美鈴は笑った。


早苗も笑った。


思い残すことは、本当に何も無いのだと早苗は思いたかった。
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