もうひとつの卒業
早苗の押し殺した声が、小さな唇から漏れる。

拓馬はその声の中から自分の名前を聞く。


「ああ。

拓馬。

愛してる。

愛してる」

何度も何度も拓馬は早苗の愛してるという声を聞く。

拓馬は強く抱き締める。


「僕も愛してる。

早苗。

愛してる」


互いに名前を呼び合う。

快感の中で言葉はさらに力を増す。

他の音は聞こえなくなる。
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