もうひとつの卒業
現実と恍惚の間を彷徨いながら、早苗は薄暗闇の中にいる美鈴と目が合う。


美鈴はガタガタと震えている。


「美鈴さん!」

早苗は放心状態からはい出しながら叫んだ。


拓馬は早苗の声で、振り向いた。


憎しみに満ちた目でこちらを睨む美鈴の姿が目に映った。


「美鈴」

拓馬の乾いた声が部屋に響く。


美鈴は二人の声で我に返り、全てを理解した。
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