もうひとつの卒業
拓馬は久しぶりに、早苗のアパートを訪れた。

通い慣れた鉄骨の階段を登った。

以前だったら心地よかった階段の金属音が、不快に響いた。


早苗の玄関の前に立った拓馬は、驚きを隠せなかった。

汚い言葉で罵られた張り紙がべったりと何枚も扉に貼られ、床には異臭を放つダンボールが置かれていた。

開けてみると鼠の死骸が何匹もあり、その中にも

「死ね」

と書かれてあった。
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