もうひとつの卒業
階段を登りながら、美鈴を追いかけた事を思い出した。

あの時追いついていたらと思った。


でも、それは根本的な解決には何一つならない。

問題は、裏切りにあるんだ。

拓馬を信じてきた美鈴の気持ちを思った。


「愛していたわ」

と言った美鈴の最後の言葉。


過去形だった。


一瞬のうちに消滅した、長年の想い。


「いったい美鈴は、どのくらいの期間、僕を愛してくれていたんだろう」


拓馬はそれが一瞬で消え去った出来事を思った。

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