もうひとつの卒業
早苗は、拓馬が毎日、美鈴を連れてこの道を散歩することを知っていた。

この一年、お腹の中の子供以上に美鈴の事をひっそりと見守っていたのだ。


車椅子に座る美鈴の時間は一年前から止まっていた。

身動き一つせず、視線は空を捉え、早苗を見ても表情を変えることは無かった。

< 232 / 235 >

この作品をシェア

pagetop