もうひとつの卒業
美鈴の下宿に着いた頃には、二人ともずぶ濡れになっていた。


美鈴の部屋は、外の階段から直接入れるようになっている。


「カギを持っているの。この前荷物をお母さんと運んだのよ」

美鈴はバックからカギを取り出そうとしてハッとなった。

しっかりと握られた手が
そのままになっていたからだ。


振りほどくことがためらわれるほどしっかりと繋がれた手。


「拓馬。手が・・・」

美鈴はうつむきながら言った。
拓馬もやっと気が付き力が緩んだ。

名残惜しさが二人に残った。

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