もうひとつの卒業
「拓馬。あっちを向いて」

美鈴は床に座ったまま、濡れた服を、脱ぎ始めた。


静かで薄暗い部屋に雨音だけが響いた。


拓馬は美鈴と反対の方向を見ながら、わずかに聞こえる衣ずれの音に耳を傾けた。


しばらくすると、何やら異質な音が聞こえて来る。


「美鈴は何をやっているんだろう?」

拓馬は好奇心を押さえきれずに振り向いた。


美鈴の真っ白な背中が目に入った。

ゴソゴソと段ボールの前で
うずくまっている。
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