もうひとつの卒業
「おまえ、相当冷たいぞ」

そう言いながら拓馬は美鈴の肩や腕を何度も撫でた。


美鈴は黙ってされるがままになっていた。


拓馬は美鈴の濡れた髪をバスタオルでゴシゴシとふいた。

美鈴は引き締まった拓馬の
腹部に手を回した。


拓馬は脇腹で美鈴の柔らかな
胸のふくらみを感じた。


美鈴の髪が乾き始めると、拓馬の手は段々とスローになり、やがて止まった。


バスタオルを取ると美鈴の顔が見えた。

美鈴の潤んだ目。

小さな唇が少しだけ空いている。



「求められている」

と、拓馬は思った。


そして自分も強く求めていると。
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