もうひとつの卒業
その少し前、裕也と七恵は体育館横の用具置場にいた。


「裕也。何をぐずぐずしているのよ」

「だって、美鈴が突然、帰省しちゃって。あと一歩で、呼び出せそうだったのにさ」


「早く、美鈴とやりなさいよ。無理やりにでも犯して!その約束で、あんたみたいなのと、寝てあげたのよ。気持ち悪い」


「わかったよ。今日、こっちに来るみたいだから、今夜にでもやるよ。本当にもう少しなんだ」



外が静かになった。

バスケの練習が終わったんだわと、七恵は思った。

拓馬と話せる。

七恵は急いで体育館の中に入った。

拓馬が美鈴と話しているのが見えた。


美鈴は深くうなだれている。

拓馬が美鈴の肩に手をかけた。

「あっ」

と言う声を七恵はあげた。


二人の抱擁は大きな歓声に包まれた。


七恵は用具置場にいる拓馬に掴み掛かった。

涙が止まらなかった。

裕也は暴れる七恵を優しく抱き締めた。

そして裕也も一緒に泣いた。


ずっと止まらなかった。
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