もうひとつの卒業
お礼に早苗は佐々木を食事に誘った。

聞いてもらいたい事もたくさんあった。

体育会系の佐々木は浴びるようにビールを飲んだ。



「そっかあ。早苗先生はバスケの経験が全然ないんだ」

「ええ。ボールを持った事もありません。ずっと、文科系だったから」

「じゃあ、どうしてバスケ部の顧問なんかに?」

「産休の引き継ぎで。

ただ、居るだけで良いって言われたから。

でも、どうしてもあの子達を勝たせてあげたくなったの。

ずっと練習を見ていて」


「そっかあ。まあ、僕に任せておきなさいって」


そう言いながら、佐々木は早苗の小さな肩を何度もたたいた。

そして話しながら、佐々木は早苗の肩に手を置いた。

なれなれしい大きな手が早苗の肩に食い込んだ。


早苗は、ぐっと我慢した。
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