もうひとつの卒業
一人で帰れるという早苗を、佐々木はなかば強引にアパートまで送った。

アパートの下まで来ると、早苗は佐々木に礼を言った。



「トイレを借りて良いかな」

という佐々木の台詞に早苗は返す言葉が見つからなかった。

今まで自分の部屋に男の人を上げたことなど一度もなかった。

拓馬の顔が浮かんだ。

うなだれている姿。


階段を登った。


佐々木はポケットに手を突っ込みながら鼻歌を歌いながらついてきた。
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