もうひとつの卒業
早苗は体を入れ替え、自由になった右手で湯飲みをつかむと、振りかぶって佐々木のこめかみを目がけて打ち付けた。


にぶい音がして佐々木は悲鳴を上げた。

こめかみを手で押さえている。

だが、早苗が逃げる間もなく、佐々木は早苗の顔をこぶしで殴打した。


早苗は衝撃で床に強く打ち付けられ、鼻から血が吹き出した。

なお更に、佐々木は早苗の前で仁王立ちになり、上から襲いかかってくる。

早苗は、無我夢中で足をバタつかせ、それが佐々木の股間にヒットした。


佐々木はうずくまって、もだえている。

その隙に早苗は腹ばいのまま、ハンドバックの場所まで行き、防犯ベルのピンを引き抜いた。


けたたましい音が辺りに響いた。

佐々木は股間を押さえながら、階段を転がるように逃げていった。
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