もうひとつの卒業
拓馬が帰ると、早苗に再び沈黙が訪れた。

佐々木との出来事が過去の記憶と重なって、震えが止まらなかった。


誰かに、この震えを止めて欲しかった。


ふと、床を見ると見慣れない携帯電話が落ちていた。

「拓馬君が忘れて行ったんだわ」


早苗はしばらく、その真新しい携帯電話を眺めていた。


それ以外特にやるべきことも見つからなかった。


着信音が鳴り始めたのは、それから10分ほど経過した後だった。
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