群青色の恋     〜私たちの恋愛模様〜
「これでとりあえず大丈夫だね」


「…うん」



大ちゃんのベッドに横になってる晴海くんは顔がちょっと赤くなってて…



傷をそっと指で触れた。



「………ん…」


頭を横に振って顔をしかめたけど、目はまだ開かなくて。


「もうそろそろ気が付きそうだね。」


大ちゃんも晴海くんを覗いた。


「……おーちゃんは会わないほうがいいよ。」


「…なんで?!ちゃんと目が覚めて声を聞くまでは心配だよ!」


立ってる大ちゃんを見上げた。



「気持ちはわかるよ。

…けどさ、逆に質問されたら、ちゃんと答えられる?
今までどうしてたとか、何してたとか、…今は何してるとか。」






……私は…なにも言えなくて


大ちゃんからゆっくり目を反らし、晴海くんの寝顔を見る。



「……リビングで待ってて。」



──…ホントだ。今、晴海くんに会っても何にもしてあげられない。



私は晴海くんの手を離し、ノロノロ立ち上がり部屋を出た。



「僕も、オバチャンに電話するよ」


そう言って大ちゃんも一緒に部屋を出る。




──リビングで電話をかけ終えた大ちゃんは


「ハルの様子見てくるね」

晴海くんのいる部屋に戻って、私はリビングの椅子に座った。



…涼が住んでるマンションは、大ちゃんたちの住んでる町の隣町で…。こっちに来たときは、もしかして…期待してた部分もあった。また会えるかも、って。



「……会っちゃった…」



晴海くんの顔を見ただけで私の心は乱される。


柔らかい髪の毛も、骨張った手もあの頃と変わらなくて…。



自分の胸に手を当てると、鼓動がまだ激しくて…



膝を抱え、顔を伏せ、椅子の上で丸くなった。



柱時計の音だけが響いてて

私の鼓動と重なった。



…でも、私は変わってしまった。晴海くんに恋してた、あの時の私とは違う。


会えないよ、こんな私じゃ…。

目をギュッと瞑った。



…一筋の涙が頬を伝った。
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